女性が演じた歌舞伎
江戸時代と言えば歌舞伎が大人気。奥女中たちだけでなく、御台所や姫君たちも歌舞伎を好んでいたと言われています。しかし大奥は男子禁制。男性の歌舞伎役者が大奥に立ち入ることは不可能に近い状況でした。そこで大奥内で行なわれる歌舞伎には御次や御三之間などに属する奥女中が歌舞伎役者の妻や踊の女師匠に習い、素人芸人として歌舞伎を披露しました。素人とは言え、演者たちは歌舞伎役者そのままの衣装やかつらを着用した本格的なもので、一度の上演に必要な費用は現在の金額で約3億円にものぼるものでした。
隠れて観る楽しみ?
今でいう人気芸能人のような存在であった歌舞伎役者には奥女中たちも熱中していました。彼女たちは宿下りや代参の際には芝居小屋へと足を運んでいたという記録もあります。本当は、奥女中が宿下りのときに芝居見物に行くことは禁じられていたのですが、それでもこっそりと芝居を観に行く奥女中が後を絶たなかったという話です。